「桝嘉が考える建築とは・・・」
東京から大阪に戻ったばかりのころ、とある方の紹介でPLANを作成させていただきました。その事業主様は、大変失礼な言い方ですが、狭い道路の先にとても形の悪い土地を所有されていました。
先祖から譲り受けたこの土地を何とか有効活用したいのだけれど、地元の建設会社に相談したところ、かなり施工が難しく費用がかさみますと言われ悩んでおられたのです。
私の父親が育てたブレーンとスタッフは、金や名誉よりも自分の技術を誇りにする人々でしたので、「よし!腕の見せ所だ!」と頑張って考えられるPLANを描き出し、事業主様とともに、ひとつひとつ検証を重ね、ようやく一つのPLANにたどり着きました。
事業主様には相当な時間を割いていただきましたが、スタッフが図面作成に費やした時間も膨大なものでした。
コスト管理という観点からは大失敗の事業でした。
しかし建物が竣工し、使用を開始した事業主様が、
「考えに考えを重ねて造った建物だから、自分が納得しているのは当然です。この建物を訪れた方々が建物へのお褒めの言葉を口にされるのに少し驚いています。本当に良い建物というものは、誰の目にも心地良く映るものなのだと、少々大げさではありますが、感動を覚えました。」 と仰いました。
そこで、思い出した訳です。私が子供の頃に祖父が話してくれたことを。
どうしようも無い畑があるとする。お前、どう思う?それをアカンと言うて文句たれてほったらかしにせえへんか?そんな風に思ってしもたら負けやぞ。
例えば、枯れた土地やったら豆撒いてみよか、泥田やったら蓮根はどやろって思えたら勝ちや。必要の無いものは世の中には存在せえへんのや。ワシはそう思とるんや。生き方もそうやろ、何になりたいとか何をするとかやなくて、如何に生きるかの方が大事やねんぞ。
この話を聞いた時、えらい前向きな爺さんやなぐらいしか思いませんでした。
けれども、今は社員一同にこう呼び掛けています。
お客様の土地に、ただ単に建物を設計して建てて、利益を得るだけ。桝嘉はそんな仕事はやめよう。
お客様の資産なのだから、何を造るかでは無く、如何に創るかをお客様ととことん詰めて創っていこう。
他が苦手とするなら、桝嘉は狭小地のスペシャリストになろう。我々の技術を魅せていこう。
現場での挨拶は、「ご安全に」を良く使います。
本当の意味での現場における安全とは ‟全てが安泰で安心出来る状態のこと” と考え、桝嘉協力会の業者様と思いを一つにして日々の技術を研鑽し、事業主様の夢を形にすることが、桝嘉の考える建築です。
そう、
「すべては感動の一言のために」
株式会社 桝嘉
代表取締役社長 大嶌保夫